家具製作を始め木工機械を使う現場で欠かせないもののひとつに「治具」というものがあります。
読み方は「じぐ」と呼びますが、これから製品を製作していく上で、順次必要な治具からつくっています。
「治具」の語源
そもそも一般的には見慣れない字でもありますがなぜ「治具」と書くのでしょう。
理工学社発行の「木材工芸用語辞典」には次のように説明されています。
じぐ[治具]: jig 同じ規格寸法のものを多くつくるときのしかけ。
定規、案内、型、位置決め、固定などのしかけはすべて治具である。引用元:木材工芸用語辞典(増補版)
ここで気づくのは英語でも同じ発音のjigと言う単語があることで、どうやらここから日本人特有の外来語に変化したのでは?という推測ができますね。
というかwikipediaをみてみると
「治具」は、英語の”jig”に(ジグ)に由来する当て字である。英語の”jig”が「工具の位置合せ/案内機構」だけを意味しているのに対して、「治具」は工具の位置合せに加えて工作物側の位置決めと締め付け固定するための道具/部品類も含んでいる点で両者は異なる。「取付具」は工作物側の位置決めと締め付け固定するものであって、工具の位置合せ/案内機構を含まないため、日本語の「取付具」と英語の”jig”を足し合わせたものが「治具」といえる。
引用元:wikipedia
とあります。
つまり「治具」という漢字は特に意味は無く、それっぽい字を英語の”jig”に当てただけなんですね。
さらには英語の”jig”の意味には無かった、「取り付け具」の意味も含まれるようになり、製造業の幅広い分野において使われているのが現状、ということです。
たしかに私が過去に勤めていた家具製造業の現場でも、何かと「じぐ」と言えばそれで伝わるので便利な単語でもありました。
治具の製作
留め切り
部材同士を直角に接ぐとき、通常、斜め45°づつにわけて、突き合わせることを「留め(とめ)」といいますが、毎回この45°を正確にだすためにその都度定規を調整していては効率が悪いですね。
そこでこのように予め45°で調整済みの定規をつくっておいて横切り盤にセットできるようにしておくと効率が上がります。
もっとも予算があれば任意の角度が簡単に設定できる「ユニバーサル定規」なる商品があるので手持ちの機械に合ったそれを入手すればかなり便利ですが・・・。
こういったオプションパーツはいちいち高額ですので自作で代用します。。

留めに切るのでストッパーも45°で
くし形定規
くし形定規は名前の通り「櫛」のような形の定規です。
どの様に使うかというと
昇降盤などで板の木口(こぐち)や木端(こば)を加工する時にこのように固定します。
すると加工材を刃に向かって押していく時に、もう片方の手でフェンス側に押し当てなくても、このくし形定規が一定の力で押さえてくれている状態になるので安全かつ、正確に加工できる、と言う装置です。
細かいことを言えば材料の反り状態や刃の切削深さなどでその設置加減も変える必要はありますが、これがあることで便利になります。
ただし引き込みの部分の幅や長さ等でも使い勝手は変わってくるので何度か試しに使ってみて、また作り直す必要はあるかも知れません。
引き込み留め接ぎ台
額縁などの仕口で『留め接ぎ』したあと、その角部分に引き込みを入れてちぎりで補強する方法を「引き込み留め接ぎ」といいますが、このときに使う台も必須アイテムの一つです。
ここに枠状の加工品をおいて押すことで四方まったく同じ深さ同じ幅の引き込みがとれるわけです。
ボール盤の調整台
ボール盤は単に穴を開けるだけの機械ですから動きとしては材料に対して上下運動のみです。
なので少数の穴を開ける分には治具は無くてもどうってことはありません。
でも同じ品を複数つくるときには最低限、このような台をつくっておくと一段と作業がはかどります。
長く使っているとよく使う部分だけが穴だらけでグズグズになるので、そこだけ差し替えられるようにアリ型で口板をつくっておきました。奥側からスライドさせて差し替えます。
これでフェンスを利用して材料の位置決めのためのストッパーを使える様になったりして便利です。
前後の動きは裏から蝶ネジで調整できるようにしました。
治具の必要性
この他にも木工をやっていく上では必要不可欠な治具はたくさんあります。
製品を作る以前の作業なのですが、自分の機械や工具にあわせて、いかに便利に使えるか、を考えながらつくるのが結構楽しいし、結局この手間を惜しむと良い作品はできないものです。
精度良く、安定したものづくりをしていく上では市販の器具だけでは足りないものがたくさんあるので、そんな時、今まで直接教わってきた先輩方を含め、先人の知恵が本当に役に立ち、感謝の限りです。
というわけで、工房の準備をはじめて半年が過ぎようとしていますが、少しづつ作品を作れるようにはなってきましたが・・・
まだまだ先は遠い道のり。日々、細かいことの積み重ねです。
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