千葉県房総半島にある小さな家具工房「キグラシ家具工房」にて。
古い水屋箪笥の修繕のご依頼を受け、また1つ、良い経験を積ませて頂いたので、例としてご紹介させて頂きます。
水屋箪笥とは
ちょっとその前に、「水屋箪笥」についてあらためて定義のようなものはあるのかと調べてみたところ、
まず「水屋(みずや)」の意味として、大きく2つあるのが分かりました。
ひとつは「食器棚」。
もう一つの意味は「台所」や「炊事場」全体の意味。
地域的に前者は西日本に多く広まっていて、後者は東日本を中心に広まったようです。
いずれも語源は茶道における水屋(みずや)にあり、そこには「水屋棚」と呼ばれる、器物を置くための棚がありますが、そこから全国各地、さまざまな形で広まった言葉と言えそうです。
※茶道における水屋(みずや)(茶室に付随する、点前や茶事のための準備をしたり、片付けをしたり、器物を納める場所
ですから「水屋箪笥」にはハッキリした定義はないものの、今で言うところの食器棚、に当たりますね。
とはいうものの、どんな食器棚でも「水屋箪笥」と言うと、個人的にはなんとなく違和感を覚えます。
世代や地域差もあると思いますが、実際に市場に「水屋箪笥」として流通している箪笥には他の食器棚と比べ、デザイン的にハッキリした特徴が見て取れますし、形状的な特徴で使い分けるのがしっくりくるのです。
また、私が過去に勤めていた家具店でも新品の水屋箪笥を作っていましたが、「他の食器棚」とは構造的な点からハッキリ呼び方を区別していました。
あくまでも作り手目線の個人的な見解ですが
- 框組であること
- 材を縦に使い(角材の広い面が正面に向くように)、建築の伝統工法の様に、柱の上に梁が乗る構造
- 羽目板には矧板(はぎいた)ではなく一枚板をならべて使うこと
少なくともこれらが揃うと、「水屋箪笥」としか言い様がありませんね。
言葉ではちょっと分かりにくいかも知れませんので一目瞭然、これらが全て揃った例、として今回の水屋箪笥をご紹介
まさに「水屋箪笥」といったものです(写真がぼやけていますが、、)
もともと二段重ね仕様の上台だったものを、サイドボードのように収納庫としてお使い頂けるように、天板を中心に修繕させて頂きました。
わかりずらい写真ですが、元々上台で天井上部は見えなくなる部分だったこともあり、天板のつくりはなかなか簡易的なつくりですが、当時のおおらかな感覚と手加工中心だった背景を考えれば効率的で妥当なのかもしれません。
幅広の薄板で上から釘で打ち付け、塞いでいますが突き合わせて並べているだけなのでその隙間をさらに上から細い挽き板で塞いでありました。
細材をハズしてみるとこんな感じで、色がのってないのでやはり最初からこういったつくりだったのでしょう。
前面には飾り(支輪)となる棒状の部材が釘とニカワ?でくっついていましたがこれも邪魔になるので外します。
するとこんな感じに柱から通ってきたホゾが抜けています。
この穴はいただけないのでホゾがそのまま上まで突き抜けていたかのように埋木を施します。
全体的にはこんな感じに杉板をはめ込みました。これは並べているだけではなく、大入れホゾで組み込んでいますので隙間は全くできません。
全体の雰囲気に合わせてあえてダメージ加工を施し、着色します。
他にも各部、補強や棚の製作などを施し、完成しました。
やはり無垢材だけでできた家具はこうして数十年経っても、蘇らせることができ、粗大ゴミを削減できる上、最終的に燃やすことになっても過剰に大気を汚す事も無いわけですから、環境保護の面でももっともっと社会的に見直されるべきだと思います。
何より使い込むほどに味わい深く、愛着もひとしおです!
後日、お客様から見事にお部屋に馴染んだ写真を送っていただきました。
以上、水屋箪笥の修繕例をご紹介させて頂きました。
当工房では、随時、このような作業も承りますので、何かありましたらちょっとしたものでもお気軽にご相談くださいませ。
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