子供の頃使用されていた学習デスクを普段使えるものに再生したい。
そんなご相談を受け、リメイクのお仕事をさせていただいたのでここでご紹介いたします。
再生(リメイク)は無垢材部分で
当工房ではこのように思い入れのある木製家具を別の何かに再生する、といったことも可能ですが
これには条件がございます。
それは素材が天然木そのままの無垢材であることです。
一方、薄い化粧材を合板などの二次加工品に貼り付けて表面のみ無垢材に見せかけた材料の場合、表面を少しでも削ってしまうと化粧材がなくなり中の芯材が見えてしまい、取り返しがつかなくなるだけでなく、任意の厚さに削りなおす事もできません。
このような理由で合板などの木質系材料の家具の場合にはリメイクのご依頼があってもお断りさせて頂いております。
学習デスクのリメイクの場合
今回はご近所でしたので実際に置いてあったお客様のご実家までお邪魔致しました。
拝見すると、少し残念なことにデスクの本体はほぼ全体がMDFに突板貼りの仕様でした。
表面材:天然木突板
表面加工:プリント紙合板
これではリメイクには使えません。。
せっかくお問い合わせいただいたのに、残念・・・と思いきやよく見てみると
本立ての側板に使われている部分と引き出しの前板部分。ここは無垢材です。
大きなものは作れませんが小物ならば、と少し考えさせて頂き、後日ご提案したのは
こんな感じの踏台です。
実際にはこれでも材料が足りないので少し追加する必要はありましたが、本立ての形状から程よく材料を生かせそうです。
樹種はナラで、家具材として申し分ない適材。きっといいものができるはず!と確信はありましたが、決めて頂くのはあくまでもお客様です。
他にも、もう一つ形状違いをご提案し、ご検討頂きました。
いざ製作へ
幸いなことにこちらのご提案通りのものでご快諾頂きましたので製作に入ります。
まずはできるだけきれいに解体し、塗膜を剥離剤で剥離します。
ご希望はできるだけ明るめの色が良い、とのことでしたので、既存の加工穴などは埋め木で処理する旨をお伝えしました。
リメイクとは言え、できる限り新材でつくるものに近づけたいのでちょうど組み上げた時に隠れる位置や目立たない位置に既存穴が来るように材料の使い勝手を決めていきます。
今回はビスも使用していますがもちろん目立たない様に木ダボで埋めます。
その際、通常の木ダボだと塗装後、木口(木材の横断面)が黒く、目立ってしまうので、このように木端(縦断面)が見えるような木ダボを専用錐でつくって使います。そうすることオイルの染み込み方が同じなので上写真の様に一見、どこを埋めたのか分からなくなります。
上部の仕口は5枚組接ぎにしました。あられ組接ぎとも言います。
ここにも既存の穴がありましたがこんな風に割れ&蝶々(契り)を施し、アクセントをつけました。
一気に完成写真ですが、契りによりメリハリを与えたことで、全体にオリジナリティーが生まれたのではないでしょうか。
因みに仕上げはクリアオイルのみです。
現段階では木目や木地の表情がはっきりと現れていますが、ナラ材のオイル仕上げは時間とともに全体に飴色に変化していき、使い込むほどに深みが増していきます。白太部分も濃くなり、色味の統一感も徐々に出ていくことでしょう。
経年変化も楽しめるのが無垢材の醍醐味です♫
最後に
今回ご注文いただいたT様、当工房にとっても貴重な経験をさせて頂き、ありがとうございました。
是非とも末永くご使用いただけると幸いです。
さて、今回は学習机からの踏台へリメイクした例をご紹介させて頂きましたが、このように無垢材を使用した家具であれば、素材としては十分です。
あなたの家に、今は使わなくなったけど捨てるのはもったいない、と思われるものはございませんか?
そんな時は、思い出は残したままそれまでとは違う何かに生まれ変わらせて使用する、という選択肢もご検討いただければと思います。