お客様ご自身で選ばれた一枚板をテーブルとして使えるように、脚の製作を依頼されましたので、オーダー家具の一例としてご紹介します。
今回の材料はお客様がご自身で調達された山桜。
一言に「山桜」といっても自然なものですので個体差があります。
今回のものは非常に厳しい環境で育ったものと思え、木目が旋回気味な上、密度が高く、大人2人では運ぶのにかなり厳しい重さでしたが、何とか工房へ運び入れました。。
これは天板ではなく脚に使う材料ですが、これだけでもカウンターやデスクの天板に使えそうな上等なものでした。
まずは厚み80mmほどの材を縦に切って部材を粗取りし、その後、細かく切り回しし、自動かんな盤という平面を出す機械で削り、部材を確保していきます。
ところが、捻じれの激しいこの材料は鉋盤で削っても両逆目、という現象でどうしても表面が欠けるような感じでボソボソに荒れてしまいます。
そんな時は超仕上げ鉋盤(いわゆる鉋がけと同じ様に削る機械)を使います。
荒れた表面を根気よく何度か薄皮で、スライスしていくと、ものすごく重厚感と深みのある杢が現れました。
ところで、厚い一枚板のテーブルに使われる脚のスタイルには一般的に、直線的で簡素なものが多く、ともすればコテコテに和風で無骨なデザインになりがちです。
天板の一枚板をメインに引き立たせるためにも脚はシンプルに、といった考え方もあるとは思いますが、今回はお客様のご要望もあり、そこを敢えて脚のシルエットにもこだわり、重々しい和風に偏りがちな雰囲気を避け、脚も含めた全体のバランスを大事にしたデザインとなりました。
幾度となく打ち合わせを繰り返し、非常に洗練されたデザインが生まれたと思います。
オーダー家具をつくらせて頂くと、自分だけでは生まれ得なかったデザインができるので毎度、勉強になるし、出来上がった時の達成感もひとしおです。
下の貫がくねっとカーブしているのは単なるデザインだけではなく、長手の貫が足置きとして丁度よい高さまで下がるようにと考えてのことです。
脚ができたところでいよいよ天板です。
こちらはすでに仕上がってオイルで保護されていましたが、今回は寄せアリ、という仕口で反り止めを施し、その反り止めと脚を固定する構造にするので、天板はしっかり平面が出ていないとなりません。
ですがご覧の通り、反りが発生していました。使用には支障はない程度ですがこのままではアリ加工ができないので、両面とも今一度、平らに削り直すこととします。
幅のある材料は機械が通りませんのでここからは手仕事となります。
この場面では「長台鉋」と呼ばれる、通常より長さのある鉋を使います。
平鉋の仕込み方にはいくつかあり、説明すると長くなるので細かくは別の機会にしますが、ざっくり言うと平らに削りたい時には出した刃先と鉋台の両端が同じ高さになるように鉋台の面を削って調整します。
ひたすら横摺り(木目と直行するように)で削って平らを出していき、その後、平鉋、電気サンダーで仕上げます。
ほぼほぼ仕上がったところで仕口の加工に入ります。
一気に進んでいますが今回は「(送り)寄せ蟻、支端残し」という仕口でやってみました。
それなりに乾燥期間が取れていて厚みがある(今回は削る前だと70mm位)板の場合、反り止めは無くても使えますがこのように反り止めを入れておけば、今後の状況変化にも安心です。
因みに今回の脚は天板と脚を取り外せるのはもちろん、長手方向の貫と妻手側の部分を楔で止める組み立て式にしていますので、このような重たいテーブルでも移動の際には負担が少なく済みます。
今回は天板が重たいので、横揺れをがっちり防ぐため、脚と天板の隅に飾りを兼ねた部材を取りいれました。
塗装は剥がしたままですが今回は無塗装のまま納品です。
納品先でお客様がオリジナルブレンドしたこだわりのオイルをご用意されていました。
最後に納品後撮影したものとお客様から後日、送っていただいた写真で締めたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
当工房ではこのようにご希望の家具をオーダーでお作りすることもできますので、何か気になる点などございましたら些細なことでもどうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。