今も尚、多くの日本人に親しまれるちゃぶ台。
私も個人的に好きなため、いくつかのオリジナルちゃぶ台を製作、販売していますが、今回はそんな「ちゃぶ台」の歴史について自分なりにまとめてみました。
参考図書:河出書房新社「ちゃぶ台の昭和」 小泉 和子 (著)
参考サイト:http://seikasya.town.seika.kyoto.jp/essays/eat
ちゃぶ台と食事の関係
家族がみんな揃ってひとつのテーブルで食事をとる。現代の私達は当たり前にしていることですが、実は明治以前、江戸時代ではあり得ないことでした。
古代から江戸時代に於いて、庶民の食卓と言えば銘々膳(めいめいぜん)を使うのが普通で、その形も身分が高い人ほど豪華につくられたものでした。
奈良、平安時代の支配層では中国から入ってきた大きなテーブル、当時は台盤(だいばん)とか机(つくえ)と呼んでいたらしいですが、これを宴会の時などに使う事はあったようです。
その場合でもやはり同じ食卓には身分の同じ人しかつくことはできません。
江戸時代までの日本はこのように、とにかく縦社会の色が強かったため、そもそもみんなで分け隔てなく囲むちゃぶ台のようなものが生まれる余地がなかったのです。
ちゃぶ台の普及時期
明治時代に入ると、急にそれまでの武家中心の縦社会から一変したか?と言うと、そうでも無いようです。
まず西洋文化を推進していた支配階級者たちは西洋館を建てました。
そこで必然的に洋風のテーブルも取り入れられます。
ここで支配層から徐々に同じ食卓で食事することを受け入れていき、そうすると街中にも西洋料理屋、ミルクホール、ビヤホールなどのテーブルを使う洋風の飲食店が生まれ、一般の人々の意識も少しづつ変わっていきます。
一方で都市部の労働階級者はそれまでの封建的な束縛が地方よりも少なかったことと、住居スペースが狭かったことから、家族全員が揃って囲めるちゃぶ台が何より実用的でした。
そのような理由からも徐々に使われるようになります。
その普及の仕方は明治10年~20年代から少しづつ使われはじめて30年代後半から一気に加速していったとみられます。
なぜ「ちゃぶ台」?ちゃぶ台の語源
今でこそ私達は何の違和感もなく使っている「ちゃぶ台」という言葉ですが、よく注目してみると、「ちゃぶ」って何? と思いませんか?
説1.
当時、中国料理のことは「卓袱(シッポク)料理」と呼ばれていましたが、この「卓袱」と言う字は、中国の広い地域で使われている唐音でしたが、中国南部の発音では「チャフ」と呼ばれていて、その呼び方が入ってきて「チャブ」と変化した、と言う説
説2.
その南中国地方では食事することを「チャフン」とか「ジャブン」と言っていて「食事する台」という意味で当時、日本にたくさん来ていた中国南部の人々の言葉からきている説
説3.
ちゃぶ台が作られ始めた当時、「チャブチャブ」という牛肉を使った西洋料理があったことから、それに似た、アメリカ人向けにつくられた中国料理「CHOP SUEY(チョップスイ)」を出す店のことを「チャブチャブ」とか「チャブ屋」と呼んでいた。そこでは未だ珍しいテーブルスタイルであったこともあり、チャブ屋の台と言う意味でちゃぶ台となった説。
現在、ちゃぶ台を漢字で書くと「卓袱台」と書くのが主流かと思いますが、結局これは当て字であって、ほかにも「茶袱台」と書く場合もあるし「食机」と書いて「ちゃぶだい」と読ませる場合もあるようです。
一方、地方によっては「ちゃぶ台」と呼ばずに「しっぽく台」とか「飯台(はんだい)」と呼ぶ地方もあるそうです。
ちゃぶ台の語源。結局はっきりとこれ、と言うものではなく、おおよそこの3つの要素が合いまった形で普及したのかな?といったところです。
ちゃぶ台は時代の象徴
ちゃぶ台は明治以前、銘々膳を使っていた日本人が初めて身分の違う者同士、同じテーブルで食事するようになる大きな転換期の象徴とも言えます。
現在、「複数人で一緒に使うテーブル」と言えば和室に置くようなどっしりとした座卓が思い浮かびます。
これも「中国料理屋」がきっかけとなりましたが、こちらは富裕層を中心に広まったようで、一貫して高級思考がみてとれるデザインばかりです。希少な一枚板を使用しているものも多いですね。
一方で庶民の間に機能重視で広まったのが私達が「ちゃぶだい」と聞いて真っ先に思いつくこのちゃぶ台です。
質素な材料で控えめな装飾にとどまっているものがほとんどですね。
ちゃぶ台の定義
ちゃぶ台、チャブ台(ちゃぶだい)は、日本で用いられる四本脚の食事用座卓である。一般的に方形あるいは円形をしており、折り畳みができるものが多い。
昭和35年ごろから椅子式のダイニングテーブルが普及し始め、利用家庭は減少していった。
https://ja.wikipedia.org/
・・・割と漠然としていて、幅広くとらえることもできると思います。
ですが最初に卓袱料理(中国料理)屋で使われていたものは天板の縁に雷文模様が施され、脚は猫脚だったりして明らかに中国風のデザインだったようですし、刳りもの脚が使われてるものも多くあり、これらは西洋の技術です。
そこから日本の大工などの職人が独自の改良を加えながら作り始めたのが、いわゆる日本のちゃぶ台、と言えると思いますが、最初期のちゃぶ台はどれも固定脚だったようです。
そこから京や江戸の狭い家でも使い勝手よく改良されたのが折りたたみ脚のタイプだったと推測できます。
でもやっぱり昭和生まれの私達にとっては、アニメでは「サザエさん」、「ちびまる子ちゃん」、だったり映画では「男はつらいよ」の一家団欒の風景。あの雰囲気を醸し出してこその「ちゃぶ台」ではないでしょうか。