当工房では、木製のトレーを「卓上膳(たくじょうぜん)」という名称で製作・販売しています。
卓上で使うお膳、という意味合いですが、用途だけを見れば「お膳」「お盆」「トレー」などと呼んでも、間違いではありません。
実際、これらの呼び名は日常の中でかなり曖昧に使われていますし、厳密な線引きをしなくても困る場面は少ないでしょう。
それでも私なりに、この形、この佇まい、この使われ方に最もしっくりくる呼び名は何だろうかと考えた末、「卓上膳」という名前を選びました。
※実際に 製作している卓上膳のサイズや仕様については、こちらのページでまとめています。
折敷・お膳・お盆・トレー・ランチョンマットの違い
折敷(おしき)
本来は檜(ヒノキ)の片木(へぎ)で作られた角型の盆を指します。起源を辿ると、木の葉を折って食器の下に敷いたことから「折って敷く」→「折敷」と呼ばれるようになったとされています。
後に檜材で作られるようになり、平折敷(ひらおしき)や角切折敷(すみきりおしき)など、脚のないものが基本形です。一方で、脚付きの足打折敷(あしうちおしき)と呼ばれる形式も存在します。
※片木(へぎ):ヒノキや杉などを薄く削ぎ割った板材のこと。
お膳(おぜん)
折敷から発展し、脚付きの構造を持つようになったものが「お膳」です。脚の形状や高さには多くのバリエーションがあり、かつては身分や儀礼、食事の場面によって使い分けられてきました。
現代でテーブル上に置いて使われるものの多くは、「会席膳(かいせきぜん)」に分類されます。
お盆(おぼん)
室町時代以前には「盤(ばん)」と呼ばれ、さまざまな用途に使われていたようですが、次第に「物を運ぶための道具」として定着していきました。底は平らで、縁は浅めにつくられるのが一般的です。
用途に応じて、銘々盆、菓子盆、茶盆など多くの種類があります。
トレー(トレイ)
英語の tray に由来する外来語で、「お盆」よりも広い意味を持ちます。物を載せて使う浅い容器全般を指し、書類用であれば desk tray や letter tray、食事用であれば service tray など、用途に応じて呼び分けられます。
ランチョンマット(プレースマット)
日本では、食事の際に皿やカトラリーを置くための布製のものを「ランチョンマット」と呼ぶことが一般的ですが、これは和製英語です。英語圏では素材を問わず、木製やプラスチック製のものも含めて place mat と呼ばれます。
以上を踏まえると、当工房の製品は分類上「会席膳」に近いものと言えますが、用途や印象がより直感的に伝わるよう、「卓上膳」という名称を用いています。
無垢材ならではの質感や、木に触れる心地よさを、日々の食卓で気負わず使っていただきたい。その思いを込めて製作しています。用途を限定せず、暮らしの中で自由にお使いいただければ幸いです。
当工房で製作している卓上膳(木製トレー)については、用途や考え方も含めて以下のページでまとめています。
▶ 卓上膳(木製トレー)について



