古い水屋箪笥の修理のご依頼を受け、また1つ、良い経験を積ませて頂いたので、例としてご紹介させて頂きます。
もともと二段重ね仕様の上台だったものを、サイドボードのように収納庫として使いたいとのご依頼でしたので、天板を中心に修繕させて頂きました。
わかりずらい写真ですが、元々上台で天井上部は見えなくなる部分だったこともあるせいか、天板のつくりはかなり簡易的なつくりです。当時のおおらかな感覚と手加工中心だった背景を考えれば効率的で妥当なのかもしれません。
幅広の薄板で上から釘で打ち付け、塞いでいますが突き合わせて並べているだけなのでその隙間をさらに上から細い薄板で塞いでありました。
細い材をハズしてみるとこんな感じで、色がのってないのでやはり最初からこういったつくりだったのでしょう。
前面には飾り(支輪)となる棒状の部材が釘とニカワ?でくっついていましたがこれも邪魔になるので外します。
するとこんな感じに柱から通ってきたホゾが抜けて見えています。
この穴はいただけないのでホゾがそのまま上まで突き抜けていたかのように埋木を施します。
全体的にはこんな感じに杉板をはめ込みました。これは並べているだけではなく、大入れホゾで組み込んでいますので隙間はできません。
全体の雰囲気に合わせてあえてダメージ加工を施し、着色します。
他にも各部、補強や棚の製作などを施し、完成しました。
やはり無垢材だけでできた家具はこうして数十年経っても、蘇らせることができ、粗大ゴミを削減できる上、最終的に燃やすことになっても過剰に大気を汚す事も無いですから、環境保護の面でも良いですね。
何より使い込むほどに味わい深く、愛着も一入です!
後日、お客様から見事にお部屋に馴染んだ写真を送っていただきました。
以上、水屋箪笥のリメイク例をご紹介させて頂きました。
当工房では、随時、このような作業も承りますので、何かありましたらちょっとしたものでもお気軽にご相談くださいませ。
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水屋箪笥とは
ところで今回、「水屋箪笥」という名称について、定義のようなものはあるのかな?と、調べてみましたので、最後に追記しておきます。
水屋の意味
まず現代における「水屋(みずや)」の意味としては、大きく2つあるのが分かりました。
- 食器棚全般
- 「台所」や「炊事場」
地域的に前者は西日本に多く広まっていて、後者は東日本を中心に広まったようです。
いずれにしても、元々は茶道における水屋(みずや)にあり、そこには「水屋棚」と呼ばれる、器物を置くための棚があります。そこから意味合いが変わりながら全国各地に広まった言葉と言えそうです。
※茶道における水屋(みずや):茶室に付随する、点前や茶事のための準備をしたり、片付けをしたり、器物を納める場所
ですから「水屋箪笥」には特に定義はないものの、一般的には食器をしまう箪笥で要するに食器棚の事ですが、茶道から広まったことを踏まえると、伝統的な日本の建築様式の一つである数寄屋(すきや)づくりの様な構造のもの、と考えればしっくりくる気がします。