スツールについて思うこと

今回の記事はわりと思ったことを徒然なるままに書いてみようと思います。

でもテーマははっきりとしていて、そう。

スツールについてです。

スツールを作るということ

スツールっていうのは、おそらく椅子の中でもかなり原始的な部類なんじゃないかと思います。
ただの板と棒が三本か四本あれば成立してしまうので。

だけど、ここで言いたいのはそう、

何事にも言えることですが、
シンプルなものほど奥が深い、ということ。

考え出すともう無限の形。 

かたちの底なし沼にはまるような。


また、それだけに「スツール」と聞いて思い浮かべるものって、人によって大きく違う気がします。

例えばハンス・J・ウェグナーの、CH53みたいに古くからのラッシュやペーパーコード張りスタイル、からの発展形。 

一方でウォートンエシェリックの三本脚スツールのような彫刻、削り出しの座面のもの。 

あるいはアンティーク家具やカントリー系によく見る丸い座面に挽き物脚が転んで刺さってる伝統的なスタイルを想像する人も多いかもしれない。

因みに自分の場合は、昔のカンフー映画に出てきた、
細長い板に角脚がついたベンチのような形。

世代的なものもあるのか、
スツールと聞くと、なぜかあの形が浮かびます。

だから工房を始めて、最初に作ったのも、
まさにあの形でした。


木工をはじめて以来、
いろいろな椅子やスツールを見るようになりました。

有名なデザイナーのものや、民芸的な素朴なもの。
振り返ると、かなり素直に影響を受けていると思います。

なんて、たいそうなことを言うつもりはありませんが、ただ少なくともその時々で、作りたいと思うかたち、っていうのがあるのは確かです。


スツールは構造が単純な分、
形やバランスの違いが、そのまま印象に出てきます。

ほんの少し脚の角度が違うだけで、
軽く見えたり、重たく見えたりする。

座面の厚みや縁の処理ひとつでも、
全体の雰囲気は大きく変わります。

ごまかしが効かない、というより、
ごまかす余地がほとんどない。

だからこそ、どこまで整えるか、どこをあえて外すか、
その境目を探りながら形にしていくことになります。


ぱっと見はシンプルでも、
整いすぎず、どこか愛嬌のあるかたち。
そんなところを、ひとつの目安にしています。


これまでに作ってきたスツールを並べてみると、
形はその時々で、様々です。

それは、その時の自分が引っかかったものを選び、
その時の技量に応じて形にしてきたからでしょう。

いま見返すと、まだ手探りな部分も多いですが、
その時々で試していたことが、そのまま形になっています。


いろいろ見ていて思うのは、
海外のクラフトマンの発想から学ぶことが多いということです。

長い時間の中で培われてきた、
形の捉え方やバランスの取り方には、
感動を覚えます。

一方で、日本的な形が外からどう見えているのかも、
少し気になるところです。


そういうことをつらつらと考えていると、

気づくと、家具に限らずいろんなものに興味が広がっていく。

その時々ですが、いろんなことが
どこかでつながっているようなことを感じることもあったり、なかったりして。

その延長線上に、いま作っているスツールがあります。


これまでにつくってきたスツール

ここまでの話を踏まえて、
これまでに作ってきたスツールをいくつか並べてみます。

Aスツール

これは工房開業前からまず作りたかった形です。

カンフー映画ど真ん中世代だと思いますが、スツール、いわゆる腰かけといえばこの形を思い浮かべ、もし少年の頃にうちにあったら間違いなく外に持ち歩いて格闘ごっこをしていたはず。

素朴になりがちなデザインですが、だからこそ逆に縁まわりの曲面やエッジの見え方に気を配って、極力丁寧に仕上げました。 

座面は細い方が座った時痛くなりがちな座骨を前後にかわしやすいと思うので、この座面はあえて狭い板を使っています。

スクエアスツール

だいぶカクっとした印象ですが座面をまっ平ではなくゆる~く一次的に曲面に削っています。
また、座面表面にアクセントとして手彫りを入れています。この頃はどこか”和”のテイストを入れてみたいと思ってどことなく鳥居を意識しています。

ディスクスツール

丸座のスツール。

一般的に丸座には円柱形の挽き物脚が付いたスツールが多い気がしますが、これは基本的に角脚でつくってみました。ただの角脚ではもちろん面白くもなんともないので、いろいろ試してみて、バランスを考えながら落ち着いたのがこの時のこのかたち、となりました。 

今見ても、曲線と直線のバランスは悪くないと思っています。
座面は中央になだらかにくぼみをつけていますが、この手のかたちは手がんなで削り出しています。

ECスツール

これも工房を開いて初めの頃ですが、ペーパーコードを使用したスツールも作ってみました。

材料は手元にあったケヤキを使用し、その後も他の材料でつくることはありませんでした。 
でも結果的に、このスツールは少し和風な印象のあるかたちなので、ケヤキがしっくり来ていると思います。

スツールに名前を付けるのは面白みでもあり、悩みどころでもあります。

いつもその特徴から考えますが、この時は運ぶ時用の持ち手があるところから「easy carry stool」。略して「ECスツール」としました。

ミニマルスツール

次もペーパーコードスツールですが、こちらは先に作っていたAスツールをもう少し座り心地を良くしたいと思ったところから発展させたものです。
板座はやはり長時間座るとどうしても座骨にきますので形は極力シンプルなまま、ペーパーコード張りでつくったことで、意外とありそうでないスツールになったと思います。

非常にサッパリとした印象からネーミングは「ミニマルスツール」として、この時点でこれが私の中で一番のお気に入りとなりました。

ミニマルスツールは定番品として、材料はケヤキの他に、ニューギニアウォールナットと言う今では珍しい樹種とクリを使った鉄媒染仕上げなどで製作してきました。

因みにペーパーコードの編み方は初期と今とでは、よりスッキリとした編み方に変えています。

三本脚スツール

これらのスツールは樹種はまちまちですが三本脚とゆるやかな三角形の座面で構成したスツール。
脚の断面は六角形をベースに手がんなでざっくりと揺らぎを与えた仕上げにしました。

座面を削る際は少しづつ実際に座り心地を確かめながら決まっていったかたちです。 
これまでのスツールの中でも、シンプルであるだけに、もっとも可能性とワクワク感を感じながら作業したのを覚えています。

SBスツール

上の写真は「SBスツール」と名付けた、比較的あたらしい作品です。

船の底の様な曲線が一番のシンボルな部分なので”ship’s bottom”。 略してSBスツールです。

クリの鉄媒染仕上げとナラの木地色仕上げでつくってみましたが、どちらも存在感抜群でゆったりとした安心感のあるスツールです。 
この形を考える際も、曲線と直線のシルエット、幾何学模様をバランスよく取り入れることに終始専念しました。

抽象的ですがシルエットには台形や弓形、部材断面には四角形と八角形を取り入れています。

結果、大げさにならない程度にさりげなく個性的なスツールになったと思っています。

この「さり気ない個性」は奥深く飽きのこないものを作るのに重要、ということを日々感じています。

ハイスツール nara/kuri

三本脚のハイスツールに対して、こちらはやや、オーソドックスなスタイルのハイスツールです。

脚の転び角度をやや大きめにとることで、安定感を確保するとともに、それぞれの貫を足かけとして使い易いようにしています。 

このスツールも三本脚スツール同様、脚の断面は六角形にし、仕上げに手がんなで揺らぎを施すことで、一見シンプルなデザインの中にも少し遊び心で愛嬌や温もりの様なものを表現してみました。


いま見返すと、まだまだ手探りで、未完成な部分も感じます。
でも、それはおそらくずっとそういうものなのかもしれません。
今後はその上に、新しい形を重ねていけたらと思っています。


最後に

スツールは比較的小さな家具ですが、
その中に、その時々の作り手の考え方や癖がそのまま表れるアイテムかもしれません。

木工を通して、ものも人も、少しずつ変化していくものなんだなと感じる今日この頃です。


そんなこんなで、また違う形のスツールを作っているかもしれません。
現在の作品はオンラインショップにも掲載していますので、よろしければのぞいてみてください。


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